ポンプ隊の仕事を徹底解剖!
- いまおか先生
- 9月5日
- 読了時間: 10分
⚪︎この記事で学べること
・ポンプ隊とは?
・ポンプ隊の基本構成と装備
・ポンプ隊の出動する現場
・教育・広報業務
・現代ポンプ隊の課題と展望
消防学校(初任科)卒業後、ほとんどの人が配属されるのが「ポンプ隊」です。(「消防隊」と表現する消防本部もありますが、今回は「ポンプ隊」で統一します)今回は、誰もが通る道の「ポンプ隊」ついてしっかり学び、消防士になった後の具体的なイメージを持っていただければと思います。
僕は、東京消防庁OBであり、地方消防での勤務経験がある今岡です!現在は、消防士を目指す人に向けた採用試験塾「FFA」を運営しています!
⚪︎はじめに - ポンプ隊とは何か?

「火事だ!」
火事と聞くと多くの人が思い浮かべる「消防車」こそが、ポンプ車です。そして、そのポンプ車に乗車して活動するのがポンプ隊員たちです。
僕は東京消防庁で2年、中核市消防で4年勤務し、数々の災害現場に出動してきました。一般の方々がイメージする「火を消す」という業務は確かにポンプ隊の中核業務ではありますが、実際の業務内容は驚くほど多岐にわたります。
「ポンプ隊って火を消すだけでしょ?」
そんな固定観念を持つ方に、ぜひこの記事を読んでいただきたいと思います。ポンプ隊の真の姿、そして現代消防におけるその重要性を、現場経験に基づいてお伝えします。
⚪︎ポンプ隊の基本構成と装備
隊員構成
標準的なポンプ隊は3〜5名で構成されます。
隊長 現場での指揮統制、戦術決定、他隊との連携調整を担当。豊富な経験と冷静な判断力が求められます。
機関員 ポンプ車の運転と、ポンプの操作(揚水や送水)を担当。機関員はいわば「ポンプ車の心臓」を操る専門家です。
隊員(1〜2名) ホース延長、放水、検索救助など、現場での実働を担当。体力と技術、そして勇気が必要な最前線の精鋭たちです。
この少人数チームが、様々な災害現場で連携して活動します。
主要装備
ポンプ車(代表的なもの)
水槽容量:1,500〜2,000リットルほど
ポンプ性能:毎分2,000リットルほど
各種ホース、筒先(ノズル)
破壊器具、救助資器材、ロープ、三連はしごなど
個人装備(主に装備しているもの)
防火衣、防火帽
空気呼吸器
個人用ロープ、懐中電灯
無線機、各種工具
これらの装備を駆使して、多様な現場に対応します。
⚪︎ポンプ隊の活動する現場

火災対応業務 - ポンプ隊の主戦場
建物火災での戦術
「火災現場は常に危険と隣り合わせ」とよく言われますが、これは決して大げさな表現ではありません。
・初期対応の重要性
火災現場到着後すぐの行動が、その後の展開を決定づけます。ポンプ隊長は瞬時に以下を判断しなければなりません
→延焼状況と拡大危険性
→逃げ遅れの可能性
→最適な放水位置
→他隊との連携方法
・実際の現場体験談
ある日、8階建てマンションの3階から出火した現場での話です。隣室の住民は避難済みでしたが、火点の部屋に1名逃げ遅れている可能性がありました。
私たちのポンプ隊はホースを延長し消火活動を、同時到着した救助隊は人命検索を分担。機関員が完璧な送水で安定した放水圧を確保し、隊員たちが迅速にホース延長を行いました。結果的に、要救助者を救出し、延焼も最小限に食い止めることができました。
この経験から学んだのは、「個々の技術力」と「チームワーク」の両方が不可欠だということです。
・車両火災・林野火災への対応
建物火災だけがポンプ隊の仕事ではありません。
・車両火災の特殊性
自動車火災では、燃料タンクの爆発危険、有毒ガスの発生、電気自動車の場合は感電リスクなど、建物火災とは異なるリスクがあります。近年増加している電気自動車火災では、特殊な消火技術が必要になります。
・林野火災の困難さ
山林火災では、水利確保が最大の課題です。河川からの長距離中継送水、防火水槽からの送水、時には他県のポンプ隊との連携など、大規模な水利運用が必要になります。(2025年2月26日に岩手県大船渡市で発生した大船渡市山林火災をイメージしてもらえると分かりやすいと思います)
救助業務 - 生命に直結する重要任務
・火災現場での救助活動
「消火と救助、どちらが優先か?」
基本的には人命救助が最優先ですが、状況によっては延焼阻止を優先してから建物内に進入することもあります。
よくポンプ隊は「火の中に飛び込む」というイメージを持っている人もいますが、無闇に進入するわけではありません。放水をして火の勢いを抑えないと進入できないこともあります。そうでなければ、活動している隊員の命も脅かされるからです。
・交通事故での活動
交通事故現場でのポンプ隊の役割は多岐にわたります。
二次災害防止(交通規制、車両移動)
燃料流出対応
車両からの救出作業
救急隊との連携
特に高速道路での事故では、後続車両による二次事故防止が最重要課題となります。
救急事案への対応
・需要を増す救急事案
近年、救急需要は高まり続けています。各消防本部においては、救急車の台数を増やしたり不要な救急要請だと判断した場合は電話を切る、といった対応もしています。それでも切迫している状況は変わっていません。
・PA連携
ポンプ隊が救急現場に出動することは多いです。それが「PA連携」です。PA連携は、ポンプ車(Pumper)と救急車(Ambulance)が共に活動することであることから、それぞれの頭文字を取って「PA」と名前がついています。
PA連携になる要件は消防本部によって様々ですが
・救急車の到着に時間がかかる場合
・CPA事案
・繁華街での事案
こういった場合にPA連携になる場合が多いです。
水害対応 - 増加する自然災害への対応
・豪雨災害での活動
近年、集中豪雨による水害が増加しています。そういった現場にもポンプ隊は出動します。
・排水作業
ポンプ車の排水能力を活用して、浸水した地下室や道路アンダーパスからの排水作業を行います。毎分数千リットルの排水能力は、迅速な災害復旧に大きく貢献します。
・水難救助
河川や用水路での水難事故でポンプ隊が先着すれば、救助隊到着までの初期対応を担います。ロープ救助技術や水上安全技術も、現代のポンプ隊員には必須スキルです。
・台風・暴風雨対応
台風接近時のポンプ隊の業務
→倒木除去作業
→看板等落下物の撤去・固定
→浸水家屋からの救助
自然災害の多様化により、ポンプ隊の活動領域は確実に拡大しています。
特殊災害対応 - 現代社会の新たな脅威
・危険物災害
工場や研究施設での化学物質漏洩事故では、ポンプ隊が出動して活動します。東京消防庁や政令指定都市の消防局で特殊災害に特化した部隊があれば、そういった部隊がメインで活動することもあります。
・対応の基本原則
風向きを考慮した安全な位置からの対応
適切な防護装備の着用
専門機関との連携
・建物倒壊・土砂災害
地震や豪雨による建物倒壊現場では、ポンプ隊が救助隊の支援として活動します。
→崩壊危険箇所の散水による粉じん抑制
→救助資器材の搬送
→安全管理
⚪︎現場以外の業務
予防業務 - 災害を未然に防ぐ重要な任務
・水利の点検
ポンプ隊の重要な任務の一つが、水利の点検です。消火栓の開閉状況、水圧、周辺の駐車状況などを確認。防火水槽を定期的に点検し、水量、場所の状況を確認します。いざという時に「水が使えない」では話になりません。
・予防査察
防火対象物の査察
建物の防火管理状況、避難経路の確保、消防用設備の維持管理状況を確認し、改善指導を行います。
・実効性のある査察
単なる書面チェックではなく、「実際に火災が起きたらどうなるか」という視点で査察を実施します。不備があれば具体的な改善方法を提案します。
教育・広報業務
・防火教育
小学校での防火教育
実際に消防職員が学校へ赴き、火の怖さと正しい使い方を教えます。
→ポンプ車の見学
→初期消火訓練
→避難訓練の指導
・自主防災組織との連携
地域の自主防災組織と連携し、初期消火訓練を実施。住民の防災意識向上に努めます。
広報活動
・消防署見学の受け入れ
要望があれば見学者を受け入れ、ポンプ車の仕組み、資機材の説明、消防士の仕事を紹介します。
・防火広報
火災予防週間などの機会に、広報車での巡回や街頭での啓発活動を実施します。
⚪︎訓練・研鑽 - 技術向上への不断の努力

日常訓練
・基礎訓練
→ホース延長、放水訓練
→三連はしご取扱訓練
→中継送水訓練
→検索救助訓練
これらの基礎訓練を繰り返すことで、緊急時の確実な行動を身につけます。
継続的な技術向上
・新技術への対応
消防技術は日進月歩です。新しい消火技術、救助技術、安全管理技術を継続的に学習し、現場で活用します。
・体力維持
ポンプ隊員には高い体力が要求されます。日常的な体力トレーニングは欠かせません。
⚪︎ポンプ隊員に求められる資質
技術的能力
確実な放水技術
迅速なホース延長技術
的確な状況判断力
他隊との連携能力
精神的資質
強い責任感
冷静さ
協調性
向上心
身体的能力
十分な体力、筋力
敏捷性
持久力
健康管理能力
⚪︎現代ポンプ隊の課題と展望

現在の課題
・火災件数の減少
建築技術の向上や防火意識の高まりにより、火災件数は減少傾向にあります。一方で、建物の複雑化や高層化により、特に都市部ではより高度な技術が求められています。
・業務の多様化
従来の消火業務に加え、救助、水害、特殊災害など、対応すべき災害が多様化しています。
・人員確保の困難
少子高齢化の影響で、優秀な人材の確保が困難になりつつあります。実際、東京消防庁の受験者数だけを見ても、10年前より大幅に減少しています。
将来への展望
・技術革新の活用
ドローンを活用した情報収集、IoTによる設備監視、AIを活用した災害予測など、新技術の積極的活用が期待されています。
・広域連携の強化
大規模災害に備えた広域応援体制の充実が重要です。
・予防重視への転換
災害対応から災害予防へのさらなるシフトが求められています。
⚪︎まとめ: ポンプ隊の誇りと使命
ポンプ隊は消防の中でも最も歴史が古く、伝統ある部隊です(はじまりは江戸時代と言われています)。しかし、その業務内容は時代とともに大きく変化し、現在では単なる「火消し」を超えた総合的な災害対応部隊となっています。
僕が6年間の消防業務を通じて感じるのは、この仕事の奥深さと社会的意義の大きさです。家族からの感謝の言葉、予防活動で事故を未然に防げた時の達成感、同僚との強い絆—これらすべてが、ポンプ隊員としての誇りと言えると感じています。
元消防士からのアドバイス
これからポンプ隊員を目指す方々には、ぜひ広い視野を持っていただきたいと思います。東京消防庁のような大規模組織では専門性を、中核市消防のような規模では汎用性を、それぞれ重視した人材が求められます。
どちらの組織を選ぶにせよ消火技術はもちろん重要ですが、救助技術、予防活動、地域との連携など、現代のポンプ隊員には多様な能力が求められます。
しかし、最も重要なのは「人を助けたい」という純粋な気持ちです。この気持ちがあれば、どんな困難な現場でも、どんな組織でも、必要な技術は身につけることができます。
⚪︎最後に

今回紹介したポンプ隊になるには、まず消防の採用試験に合格しなければなりません。
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